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ソフトSMな読書案内 甘詰留太「ナナとカオル」 【etc】report・review

07.23.2011 Comment:6
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「現代東京下町の描写×高校生のピュアな純愛×SM」というテーマでツボにはまってしまった映画「ナナとカオル」。遅ればせながら原作のマンガも読みました。→あらすじ&映画版の感想文

原作マンガも映画とテーマは同じだけれど、マンガのほうがエロさ300パーセントくらい増。手に汗にぎる展開で、ハラハラドキドキ、スポ根マンガのような読了感。SMはスポーツ(あくまでも「本気」でやるスポーツ)に似ているのかも?カオルのもうひとりのパートナー(?)・陸上部の館さんも、SMは、陸上競技で走って、辛くて苦しくて、そしてゴールして最後に「頑張ったね」と言ってもらうのと似てる、と言っているし。

そして、SMで大切なのは、とにもかくにも「信頼」と「コミュニケーション」みたい(「信頼とコミュニケーション」って会社のスローガンみたいだけど 笑)。
拘束などをされる場合は、MESSYより体の自由がきかなくなってしまいます。たとえばMESSYでは視界を遮られますが、「素材」で覆われて視界を遮られるのと、「目隠し」で覆われて視界を遮られるのでは、後者のほうが怖いと思います。視界、手足の自由、言語の自由、これらの可能性を「ゼロ」にされるのは怖い。そうなると頼みの綱は、信頼感と、制約された条件・状況のなかでのコミュニケーションだけです。

それと、SMってSがMを「いじめる」っていうイメージがあったけど、そうじゃない(そうじゃない関係性もある)、っていうこととか。。。などなど。ナナカオを読んで、SMのイメージが覆された感じです。
ちなみにマンガの中ではローション、はちみつ、赤ワインも登場します。縛ったナナの身体や顔に。。。っていうシチュエーションは、エロい!

SMだけでなく、WET、UW、ゼンタイ、女装、コスプレ、セクシャルマイノリティ、など、いっしょくたにしてはいけないかもしれないけれど、縁のある(?)ご近所(?)のふしぎな世界をいろいろのぞき見しています。
知らないことが多いし、自分自身が偏った嗜好を持っているのにもかかわらず、あらゆることについて偏見を持ってイメージしていることをあらためて気づかされたりとか。

深入りはしないように、注意注意(笑)。


追記。「ハチミツとクローバー」などで有名な羽海野チカさんが描いたナナ(!)も載っている同人誌付きの「Black Label」も購入。本編のナナとカオルのプレイはソフトSMですが(今のところね)、この番外編は、緊縛師とそのパートナーの「マジSM」を、ナナとカオルが見学するという内容です。アロマが焚かれ、ジャズのかかる田舎の古民家の一室で。。。。。。まさに鬼六先生の「花と蛇」の世界でした。
「SMとは、簡単に言えば非日常だ。正確には日常の異化。日常とは地続きでありながら、日常とは違った別の真実を引き出す行為だよ」とは、緊縛師の更科先生の台詞。うーん、興味深い台詞です。

性同一性障害アーティストのドキュメンタリー映画「ピュ~ぴる」を観た 【etc】report・review

07.10.2011 Comment:0


「毒殺を策略するケーキ職人」「虐待された道化師」など、Selfportrait#01-#38の中にMESSY的な作品があることがきっかけで存在を知り、気になっていたコンテンポラリーアーティスト・ピュ~ぴるさんのドキュメンタリー映画「ピュ~ぴる」を観てきました。

“性同一性障害の現代アーティスト“ピュ~ぴる”、「彼」が「彼女」へと変わってゆく8年間に寄り添った感動のドキュメンタリー”

これが映画「ピュ~ぴる」のキャッチコピーです。確かに映画の中で、どこにでもいるような男の子だったピュ~ぴるさんが、ホルモン投与や手術などによってどんどん女性になっていき、それに比例するようように、作品もどんどん洗練され、美しいものになっていきます。

だけど、ふと何かの問いに答えたこの言葉のほうが、より、真実(真実っていう言葉も適当ではないけれど)に近いような気がしました。

「女性になりたかったんじゃない。ただ、“ピュ~ぴる”になりたかったんだ」

ピュ~ぴるさんには、理想の「ピュ~ぴる」のイメージがありました。それは「女性」というアイコンでもありますが、作品に登場する、真っ白な顔に真っ赤なハートの唇をして滑稽なコスチュームを着た「もの」でもあるのです。

形容できないもの。カテゴライズできないもの。カテゴライズされることの怖さ。理解できないものを理解できないままで受け入れることの難しさ。ありたい自分を手に入れるために支払わなければならない膨大な代償。たくさんの矛盾。どうしても自分自身と重ね合わせてしまいます。
また、ピュ~ぴるさんが表現をはじめるきっかけになったのも、同志との出会いでした。「GOLD」というゲイの集まるクラブ(?)のような場所。そこにいれば、自分は何も特別な存在ではない。そんなところにもやっぱり共感してしまいます。
aiも、自分が幸せに生きていけるように、決断すべきときには、決断したいと思います。

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ちなみに映画の中にはこの「毒殺を策略するケーキ職人」のメイキングもあります。「Selfportrait#01-#38」ではいろんな素材が使用されていて、何を使っているのかがWAMMER的には気になるところ。このクリームも、他の作品に使われているスライムみたいな質感の素材も。。。

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パンフレットより。ピュ~ぴるさんの創る世界はとてもファンタスティックで、得体の知れない何かに変化してみたいという欲望が刺激されてしまいます。塗ってみたいな、着てみたいな。そして踊ってみたいなぁ!

MESSYな読書案内#04 江戸川乱歩「パノラマ島綺譚」 【etc】report・review

07.09.2011 Comment:6
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江戸川乱歩の短編「パノラマ島綺譚」。
以前もちょっと書きましたが、売れない小説家の人見廣介が、容姿が瓜二つの大富豪・菰田が病死したことを知り、彼になりすまして孤島パノラマ島に荒唐無稽のユートピアを創りあげる、というお話です。

海底世界の描写が印象的。「腐りただれて穴のあいた顔の様に気味悪いあなめ」「赤毛の女が髪をふり乱した姿の牛毛海苔」「そのドロドロの、黄に青に赤に、無数の蛇の舌ともつれ合う異形の叢」―これは海草のことです。ただの海草がこんなふうに表現されています。
人魚(潜りの上手な女)も登場。「頭上に渦巻く黒髪、苦しい相に歪んだ笑い顔、浮上がった乳房、身体一面に輝く水泡」―。やがて人魚は「水中に耐え難く」なって、「肺臓に溜めていた空気をホッと吐き出し、昇天して」ゆきます。UWフェチっぽい描写?なかなかドキドキします(笑)。
また、島での乗り物は、「女体蓮台」。全身を青みがかった白に塗り、「肉体の凹凸に応じて紫色の隅を置いた」女たちが円になったものです。ボディペイントの裸女でできた蓮。すごいイメージです。

こんな感じの描写が延々と続いていきます。パノラマ島に存在するものたちは、自然も人工物も人もすべて美しく、エロティックで、そして恐ろしく醜い。そんな「表裏一体」なところに惹かれるのかもしれません。
エロとグロと美の執拗な描写の繰り返しを読み進めるうちに、いろいろと刺激されて、いつしか自分だけの「パノラマ島」ができあがっていきます。グロは大の苦手なはずなのに、シンクロしてしまった。なんでかなあ。

最後に、印象に残った廣介の言葉を。

建物の外にも世界がある。
建物の中にも世界がある。
そして二つの世界がそれぞれ異った土と空と地平線を持っているのだ。